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五葉松 樹齢約100年

五葉松 樹齢約100年

風雅展2015 床飾り

五葉松 樹齢約100年
主木 五葉松 樹齢約100年
鉢 南蛮丸
卓 唐木六角櫓卓
掛物 月の図 城翠 筆
添 木彫 笠に杖 (田中一光 作)                      

五葉松
侘び枯れた古色見事な五葉松。

腰に山採りならではの厳しい屈曲を持ち、樹冠の落ち着きや落ち枝の絶妙な間調子など、締め込まれた鉢合わせと共に「文人盆栽」としての妙趣を見事に伝える逸樹です。培養によって細身の若木を薄模様仕立てで瀟洒な雰囲気を見せる樹が市井に氾濫していますが、真の文人盆栽とは“削ぎ落とされた美の中に孤高の厳しさを潜ませ、外見は静謐な神韻を響かせる”ものを指します。

突き詰めれば細身のみを捉えるのでは無く、その盆中に顕在する“脱俗の境地”へ届く人生観にも似た“生きよう”が感得出来る作品に与えられるべき名なのです。この閑寂雅境を現出する五葉松を更に高い精神美へと昇華させた一席をご紹介します。 


木彫 笠に杖 (田中一光 作)
「月落ちて露光冷ややかなり、松根 羅屋を照らす・・」禅僧が夜半の禅行の際に詠った有名な語です。本席はこの胸中を「旅」に身を置く世界に置き換えた飾りと言えます。

天空の月は澄む心そのものであり、松の生きる姿も月もあるがままの自然(自分)であり、添えられた笠と杖は「生きる意味を問い続ける旅」の象徴。

笠は既に綻び、杖を置く胸中は間もなく辿り着く“悟りの境地”を予見しています。盆栽飾りの中に沈潜している“見えぬ真実を観る”事への思いが込められているのです。盆栽飾りのひとつの到達点が垣間見える一席です。