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黒松 銘「鎧掛けの松」 樹齢約350年

黒松 銘「鎧掛けの松」 樹齢約350年

黒松 銘「鎧掛けの松」 樹齢約350年

黒松 銘「鎧掛けの松」
この樹は、徳川伝承の黒松です。
皇居の盆栽を彷彿させる魁偉な幹・枝は古式盆栽の証しであり、少なくとも戦前、あるいは遠く明治期に遡る作出と思われます。 
命銘の由来は不明ですが、『江戸名所図会』には、各地に「鎧掛松」と言われる名松が描かれ、名立たる武将がその木陰で休息したなどの由緒が語り継がれています。 
徳川家伝承の松にこの銘が冠されているからには、そうした松にちなんだ命名だったかもしれません。 

かつて、この樹は旧蔵者が大切にするあまり手を加えることをよしとせず、植替えすら制限されていたために衰弱死の一歩手前までいきました。
樹勢回復を意図して盆栽作家のもとに持ち込まれ、植替えが行われていたのですが、通常1~2時間で済むところが丸一日要したと言います。 

丹念な作業の甲斐あって枯死を免れ、ようやく枝葉に力が甦ってきました。 


 
今日の手入れ技術をもってすれば、この樹を現代風の均整のとれた盆栽に改作することも難しくなかったでしょう。
盆栽の本質を知る作家はあえてそれを行わず、古盆栽の樹形を忠実に守りました。 

盆栽は生命ある植物を素材とする芸術であり、年月の経過につれて変化するのが宿命です。 

しかし伝承古木のように過去の作り手=栽匠の技や美意識が刻み込まれている樹の場合、軽々にそれを替えず守り継いでいくことも大切なのです。