栃木県下野市のにある
竹楓園 「自彊亭」
ここは景道二世家元である須藤雨伯師が自邸とする庭園と建築で、
現在確認出来る盆栽や水石の本格座敷飾りを実践する数寄屋建築として、
最高峰のものと言えます。
ご存知の方も多いと思いますが、私はこの竹楓園がまだこの様な立派な構えも無い頃
に修行に入り、23年の歳月をここで過ごしました。
現在の姿は私が26歳の時に出来たもので、この自彊亭での世界が若い頃の私には何よりの勉強でした。
福島茂夫先生、片山貞一先生、小口賢一先生、杉井忠司先生、横山巌先生など、
今はもう鬼籍におられる大家の皆さんのお手伝いをしながら、奥深い世界を見つめ続けたのがつい昨日の出来事の様に思い出します。
自彊亭「本書院」での飾りは五葉松名樹による“慶賀の飾り”を試みました。
関西から四国へと半世紀にわたって受け継がれた斯界の“未公開樹”です。
私の所で5年の刻を過ごし、二度にわたる鉢合わせでこの姿になりました。
この本書院は自彊亭の中で唯一の“格”を持つ間です。
“侘び寂び”とか“風趣風韻”と言う味わい的な雰囲
気では無く、凛然とした格調が具わった作品ことが似合う席です。
「幾星霜の年輪を重ねてなお、旺盛な生命力を見せる松の老幹、瑞雲の中に昇る日輪、遥かには怒涛の中より天に向かって咆哮する龍」
覇気と希望と栄華を象徴する一席としました。
私達が盆栽家として“深奥を究めん”とした世界が少しずつ斯界からその大切さと共に薄れていってしまっているような気がします。
日本人、盆栽人が長い文化の歴史の中で辿り着いたまるで観る者に問いかける様な感覚こそが
「盆栽や水石が何を語り、何を伝えようとしているのか」を教えてくれているような気がします。